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【映画】『望郷』が見せるパリの美しさ

フランスの植民地アルジェリアに、カスパという町があった。
そこは、無法地帯となっており、犯罪者の巣窟で、警察も容易に手出しできなかった。


そこで、暮らす一人の男ぺぺ・ル・モコの物語。

ぺぺは、パリ生まれの前科15犯、強奪33件、
銀行強盗2件でパリ警視庁から追われるギャング。


そんな彼を捕らえるためにフランス警察は躍起となる。

一方、カスパの地元刑事スリマンは、ぺぺを黙認しているのだが、
裏では、フランス警察と手をむすび、ぺぺを追い込んでいこうとする。


そこに現れたのが旅行中のパリジェンヌ・ギャビーだった。

その美しさは、身にまとう宝石も見劣りするほどだった。

彼女にすぐさま心酔するぺぺ。


その恋心に漬け込む地元警察サリマンであったが、
ぺぺは、サリマンの計略を知る。

ぺぺは最後ギャビーに一目会うために、
フランス行きの船が出る波止場へ向かった。
しかも、そこに警察の待ち伏せがあることを知りながら。


そして、最後に描かれる悲しきラスト。






この物語の原題は「ぺぺ・ル・モコ」であるが、邦題は「望郷」。

まさに、ペペが恋焦がれる故郷パリを思う物語である。


そして、その象徴が、パリジェンヌ・ギャビーであった。



異邦人溢れる田舎ではなく、ましてやそこで出会う女性ではなく、
パリという夢の街、そしてそこからやってきたパリジェンヌに、ペペは惹かれる。

そこに自分を同一視もする。

ギャビーがいう、「We're neighbors」という言葉に、
ペペは喜びを感じる。


そして、後半、昔のパリの時代を思い出す太った女性の逸話が描かれる。

かつて美しいパリジェンヌで歌姫だったその女性は、
涙を流しながら、蓄音機から流れるパリの音楽に耳を傾ける。

その望郷の念こそが、この映画全体に奥行きを与える。

しかも、この映画でパリの映像は存在しない。
けれど、見ている観客はパリの美しさを思い描き、
見たこともない街への望郷の念を共有する。


だからこそ、最後にペペは、リスクを犯しても、
ギャビーを追いかけていく。

そして波止場で、「ギャビー」と叫ぶ。

それが、汽笛にかき消される演出こそが、
ペペの思いがギャビーに、そしてパリに届かないことを表していた。






望郷 [DVD] FRT-171

ファーストトレーディング

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by shinya_express | 2010-11-24 01:30